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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄18

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第18話翌朝、私が出勤すると鼻にツンとくる独特の匂いが社内に充満していた。私はその匂いがオフィスに飾られた大量の白百合の花から発せられている匂いだとすぐに理解した。『どう?キレイでしょ?』いつの間にか私の背後にいた山村優子がニヤニヤしながら私に話しかけてきた。『あ、おはよう。キレイね。山村さんが持ってきてくれたの?』私がそう言うと山村優子は歯をむき出しにしてうんと頷き『山村さんじゃなくて優子って呼んで?』と言って私の肩を叩いた。ざっと見たところ30本、いや50本はあるだろう白百合の花。私は花の匂いのせいか落ち着かない気分だったので『でも・・・ちょっと多すぎないかしら?』と余計なことを言ってしまうと山村優子の顔から笑みが消え表情がなくなって『白百合の花言葉は純潔よ。私、純潔を捧げるの。悟さんに捧げるのよ。うふふあっ、あたし制服に着替えてくるわ?』と言って更衣室の方へと消えていった。よく見ると山村優子はどこで買ったのかちっとも似合っていないユリの花柄のワンピースを着ていた。 昼休みになってまたユキが私をランチに誘ってきたので一緒に蕎麦を食べることにした。オフィスを出るときに不意に視線を感じたので振り返ると私とユキをじっと恨めしそうに見つめる山村優子の姿があったので私は驚いて何も見なかったフリをしてユキとオフィスを出た。『あたし、色々考えたんだけど悟くんってかっこいいのよね・・・うん・・・すごくかっこいい・・・まぁ彼女がいなかったらあたしが付き合ってあげてもいいくらいよね・・・うん・・・』昨日は別れた男の話で今日はもう次の男の話。しかも、私が悟を好きなのを知っていてでも年上の彼女がいるから悟のことは諦めた方がいいなんて言って結局なんだかんだとユキもやっぱり木下悟狙いだったのだ。蕎麦屋に来たのにお腹がすいていないと言い出したユキはオレンジジュースだけを注文して携帯をいじりはじめた。しばらくするとユキは自分から『ごめんごめん、今メールしちゃってたの。悟くんにメールしちゃった。』とわざと私をヤキモキさせるような事を言い出した。ユキは悟のメールアドレスを知っている。そう思うと私は不意に敗北感という感情に押しつぶされそうになったが顔には出さないように冷静さを装った。『自分から誘うのはナンセンスじゃない?誘われる女になってこそ男を虜にする女よね?でも、今朝も【仕事がんばろうね】ってメールしたのに返事がないから今度は【午後も仕事頑張ろうね】ってメールしちゃった。あたし案外健気じゃない?』ユキは笑いながらそう言ってオレンジジュースを少しだけ飲んだ。私が悟のことを好きなのを知っていてわざわざ悟の話をしてくるなんて一体ユキはどういう魂胆なのだろうか?先制攻撃を仕掛けて私をひるませるつもりか?だとしたらユキは大きな勘違いをしている。ユキは恋の駆け引きでもしてるつもりなのかもしれないが私から見たら言ってることとやってることが食い違っていてよせばいいのに我慢できずに自分からメールをしてる重い女のようにも思えた。それにだいたい、自分から誘おうが誘われるのを待とうが朝から悟にメールを打っても返信すらこないユキにははじめからチャンスなどない、脈がないことくらい私にだって分かった。 でも、そこがユキの可愛らしさなのかも知れないとも私は思った。若いからこそ思う存分自分の気持ちをぶつけられる。私はそんなユキをうらやましくも思いそして同時に自分が随分と歳を取ってしまったようにも感じて歯痒い思いだった。私はもう誰かに遠慮しながら幸せを黙って待っているだけの人生なんて送りたくなかった。私はお凛との約束も忘れていつの間にか自分だけが幸せになることを考えるようになっていた。『そう言えば・・・びっくりしたわよね?あの白いユリの花。あれ、山村さんの仕業でしょ?何の嫌がらせかと思ったわ?ホントやることなすこと不気味なのよ』突然、ユキが山村優子の話をふってきたので私は不意に意地悪な考えが脳裏に浮かんだ。『そう言えば・・・昨日山村さんに残業の手伝いを頼まれたんだけどね・・・やっぱり山村さんも悟くんのこと好きみたいで今度、食事に誘おうかなって思いつめた感じで言ってた。。。。』私は声のボリュームを二つほど下げて内緒話をするかのようにデタラメな事を言った。するとユキの目の色が変わるのがはっきりと分かった。『へ~やっぱり・・・でも、山村さんじゃ無理でしょう?お話にならないものあの顔じゃ』と、ユキは笑った。私は笑わずに『でも、男の人ってお酒飲んじゃうと誰でもよくなっちゃうことってあるからね。私、ホステス10年もやってたのよ?男と女が別れる原因ってお酒と他の女が絡んでくることって案外多いのよね』と、力強く意味深に言った。 私は10年も不倫をして恋愛なんてちっとも上手に出来ない女だったがホステスをしていた過去を出しながらあたかも自分が恋愛のエキスパートのような言い方で、説得力を持たせて言った。『ふーん、そうなんだ、まっ、あたしには関係ないけど・・・』ユキは興味なさそうに言ったが内心、山村優子には負けたくない思いでいっぱいだったに違いない。仕事では勝てなくても男を誘惑する力量では負けられない。そんな安っぽいギラギラとしたユキのプライドが黙っていても伝わってきた。それからユキは携帯を取り出してなにやらメールを打ち始めていた。きっと、悟を食事にでも誘うメールを打っていたのだろう。山村優子が悟を食事に誘った話は私の作り話なのにユキはすっかり私の話を信じきっているようだった。私には計算があった。ユキと山村優子を煽って悟に激しくアプローチさせ悟を困らせたところで私が悟の相談に乗る。相談に乗ってる間に悟は彼女よりも私を好きになる・・・何故かそ続きをみる

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