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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄19

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第19話悟から食事に誘ってもらった日、私はそれを口実に悟とメールアドレスを交換した。メアドを交換した夜は悟からのメールがくるのをただ、じっと携帯を眺めながら待っていた。アドレス帳に登録した『木下悟』という文字を何度も見ては私は一人でニヤニヤと笑みを浮かべていた。部屋の中でただ連絡を待って待って待ち続けているうちにドキドキして悟のことを思い浮かべてはため息をついてそして今まで以上に悟のことがどんどん好きになっていくような気がした。悟には彼女がいるのだから自分からメールするのは失礼・・・でも・・・ユキはそんなのおかまいなしにメールを打っているに決まっている。悟はユキにメールを返信しているのだろうか・・・もしかしてメールを続けているうちに悟は今の彼女からユキに心移りしてしまうのではないだろうか?そう言えば・・・山村優子が最近、悟が彼女とうまくいってないらしいと悟のホームページから調べた情報を元に言っていたのを思い出した。負けたくない・・・取られたくない・・・私もユキのように積極的にメールした方がいいのだろうか・・・でもそんなことをしても重たい女に思われるだけ・・・じゃぁひたすら悟からのメールを待っていればいいのだろうか?でも、待っていてメールがこなかったら???例え食事に誘われたとしてもそれはあくまでも同僚というだけであって私にも脈がないということになるのでは??淡い気持ちが次第に不安へと変わり色々考えすぎて気分が悪くなった。それでも私は悟からのメールを待ったが結局、朝になってもメールは来なかったので私は自分から悟に『食事の件ですが今週の金曜日はどうですか?』と、あえて可愛気のない事務的なメールを送信して出勤した。送信ボタンを押した私の手は酷く震えていた。すると悟はその日の午前中に自分のデスクから私にメールを送信してきた。私は自分のデスクで仕事をするフリをしながら人目を忍んでこっそりと携帯を開いて見ると決まり、じゃぁ金曜日に(〃^¬^〃)という絵文字入りのメッセージが悟から送られていた。私は嬉しくなった。絵文字が入っているだけで何か悟との気持ちが近づいたような気がした。不意に自分のデスクから悟を見ると悟は私をチラリと見てアイコンタクトをした。私はもう悟に夢中になっていた。金曜日になって私は朝からソワソワとしていた。待ち焦がれた悟との食事の日をやっと迎えたからだった。私はその日、初めて自分からユキを昼食に誘った。この内面からあふれ出る幸せを何も知らないユキに見せつけたかったのかもしれない。『風邪、大丈夫なの?』前日、風邪で会社を休んだユキを気遣うように私がそう聞くと『風邪?あっ、そうそう。ホントは仮病なの。会社休んで美容室行っちゃった。見てみて?カラーリングしたの。前のよりちょっと明るいでしょ?だって、根元が黒くなってプリン状態だったのがあたし許せなくって』とユキはケラケラと笑いながらそう言った。『んもう!心配したんだから。』私はユキの体の心配など全くしていなかったがそう言った。ユキは知らない。今夜私が悟と二人きりで食事に行くことをユキは知らないのだ。私はなんとも心地の良い優越感に酔いしれていた。するとユキがこんなことを言い出した。『でもさ、あれだ。悟くんの彼女ってどんな人なんだろうね?年上ってのは知ってるけど何歳くらい年上なのかも知らないしだいたい、何でそんな年上と付き合いたいかな?もしかして、お金だったりして?年上女がお金で悟くんを必死に繋ぎとめてるとか?あはは、まさかね。でも、一度見て見たいと思わない?その悟くんの彼女。そしたら絶対あたしの方が可愛いって自信でちゃうんだけどな。はぁ・・・あたし、男の子が途切れたことないのに。もうすぐ彼氏いない歴1ヶ月になっちゃう・・・・だから早く悟くんと付き合わなきゃ!』私はユキのいちいちイライラする妄想を軽く聞き流した。しかし、確かに・・・悟が年上の女と付き合っているという情報しか私は知らない。どんな女と付き合ってるのかどうやって知り合ったのかどうして今、二人は別れそうなのか。私は悟ことをそしてその女のことをあまりにも知らな過ぎた。私は悟と食事をする前に何としても今の彼女についての情報をもう少し調べておく必要があると感じていた。昼休みが終わってオフィスに戻ると私は真っ先に山村優子のデスクに向かってそっと彼女に耳打ちをした。『ねぇ・・・優子、悟君の彼女ってどんな人なのかしら?悟君の日記で何か進展はあった?』私は何としても夜までに情報を掴んでおきたいという焦りからか自分から優子に話かけてしまった。『どうしたの?幸子から悟さんの話題なんて・・・まさか・・・幸子まで悟さんを狙っているんじゃないでしょうね?』山村優子は小声でそう言うと眉をひそめて私を疑いの眼差しで見た。『違うわよ、ユキが・・・そう・・・ユキが悟くんの彼女ってどんな人だろうって言い出したからちょっと気になってね・・・』私は苦しい言い訳をしたが山村優子は『そう・・それならいいけど、それにしてもあの女も図々しいわね。悟さんの彼女を知ってどうするつもりかしら?』と言ってパタパタとキーボードを叩いて悟のホームページを開いた。『最近、彼女とケンカしたらしいわ?』山村優子はそう言って画面を指差した。将来のことで意見が食い違った。でも、夢は諦めたくない。そう、悟の日記には書いてあった。『悟さんの将来・・・夢・・・一体どんな夢なのかしら?でも、その夢に彼女がついていけないならさっさと別れるべきよ。私だったら迷わずついていくのに・・・私と結婚すればいいのに・・・』山村優子はそう言ってまた、悟の掲示板に書き込みをした。絶対別れるべきですよ。やりたいことをやった方がいいし、彼女にも辛い思いをさせるだけです。私はあなたの夢を画面の向こうからひっそりと応援してます。白百合のY子 本当に山村優子の書き込みはいつも気持ちの悪いものだった。結局、悟の彼女についてつかめた情報は将来についての意見が悟と違っているということだけだったがそれだけ分かれば十分だった。あとは今夜、食事の時にそれとなく聞いて別れた方がいいようなことをほのめかせば・・・・時計の針が19時になった途端私は急いで更衣室に向かい着替えて待ち合わせの焼肉屋へと向かった。一緒に出るのは恥ずかしいので直接店で待ち合わせようと悟からの指示があったからだ。はじめての食事、それが焼肉だなんてまるで2人は付き合ってるみたいだ・・・私はそんな気持ちで向かったのに焼肉屋の入り口でばったり出会ってしまったのはユキと山村優子だった。(どうして?)私もユキも山村優子も3人ともそんな驚いた顔をしていた。そこに悟がやってきて『おまたせ!それじゃみんなで食べようか』と言って店に入って行ってしまった。『ひど~い!2人きりだと思ったのに!!』開口一番、ユキがそう言って悟の腕にしがみつくように店に入った。ユキは胸を強調した少し露出のある白い服を着ていた。そう言えばユキは昨日、会社を休んで美容室へ行ったと言っていた。まさか、悟とのデートのために会社を休んでまで美容室に?私は胸が苦しくなった。『私も2人だけだと思ったのに・・・まさかこの女3人が誘われてたなんてね・・・面白いじゃない。幸子、行くわよ』そう言って山村優子も店に入った。山村優子はさっきまで職場ではおさげ髪だったのにいつの間にかポニーテールをしてまたあの百合の花のワンピースを着ていた。ポニーテールをすれば男が喜ぶ時代は10年以上も前の話なのに山村優子はいまだにそれを信じているかのように自信に満ち溢れた顔をしていた。私はユキのようなあからさまに『女』をアピールした服ではなく無難な服装で来てしまったことを心底後悔した。それに私はもう何が何だかよく分からなかった。私はてっきり2人だけで食事をしようと悟に誘われたとばかり思っていたのにまさかユキと山村優子にまで声をかけていたと知って私は悲しくて悲しくて目の前に、こんなにも近くに悟がいるのに2人の心はとても遠いところにいるような気がして涙が溢れ出しそうになった。確かにそういえば悟から『2人きりで』と言われたわけではなく私のはやとちりだったのかと私は落胆した。でも・・・もしかしたらこれは悟のSOSなのかもしれない。ユキと山村優子の重くて鬱陶しいアプローチを私に見せて悟は私に助けを求めてるのかもしれない。頭の中がもうぐちゃぐちゃで私は吐きそうになった。テーブルに案内された私たちはお互いを警戒しながら席に座った。悟の隣にはユキが座り悟の目の前に私が座り悟の斜め向かいに山村優子が座った。悟と私は生ビールを注文してビールが飲めないというユキはファジーネーブルを注文した。山村優子は日本酒を頼んでいた。『みなさんいつもご苦労さま。今日はパッと飲んで楽しみましょう!かんぱい!』悟は乾杯の挨拶をしてビールを一気に飲み干して『うめ~最高!!』と本当に美味しそうな顔をして言うともう1杯ビールを注文した。私はそんなやんちゃな悟の笑顔を見て心の底から可愛いと思い年下の悟のことがまた好きになった。職場では本当に仕事がデキる男なのに会社を一歩外に出ると普通の男の子でそのギャップがまた悟の魅力でもあった。きっと、悟は不器用なだけなのかもしれない。だからこんな風に私を誘ったのかもしれない。そう考えているとユキが上目遣いで悟を見ながら『すご~い。悟くんもっと飲んでもっともっと』と言って何の魂胆なのか悟にどんどんと酒を飲ませそして隣に座った特権をフルに生かして胸をギュウギュウと悟に押し当てていた。ブヒーブヒィ・・・・その様子を見ていた山村優子の呼吸が突然荒くなった。『だ?大丈夫?』私が静かに心配すると山村優子は悟とユキの様子を睨みつけながら鼻を豚のように鳴らして呼吸を荒くした。『ブヒーブヒーブヒィ・・・・次第に山村優子の呼吸は荒さを増し過呼吸のような症状が見られた。『ちょっと・・・お手洗いに・・・』山村優子はぜいぜいと体を震わせながらハンドバッ続きをみる

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