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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄7

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第7話トイレの中で泣いて帰り道で泣いて帰宅してからも泣いていた私は夜になってタツヤに確かめてみることにした。タツヤの口から真実が聞きたい。ヨーコが言っていたことは本当なのか私はタツヤに電話することにした。だってタツヤは私のことを別に嫌いになったわけじゃないのだから。電話くらいしてもいいよね。そんな気持ちで電話をすることにした。トルルルル トルルル トルルルル3回目の呼び出し音で出たのはタツヤだった 『はい、もしもし』懐かしい声だった。付き合ってた頃は毎日聞いてた声。私はまた泣きそうになった。『タツヤ?私、うん幸子・・・ごめんね、突然。』私はそんな風に話した。『あぁ・・・うん。どうした?』タツヤは少し戸惑ったように返事をしたが私の事を優しく気遣ってくれた。『あのね・・・うん。タツヤ他に好きな人が出来たって言ってたけど、それって誰?もしかして、ヨーコ?私、聞いちゃったんだよね。タツヤとヨーコが付き合ってるってそれで・・・それで・・・』私は単刀直入にタツヤに聞いた。私はウソがつけない女で好きな人にはウソをつかないことが大切なんだと信じていた。私の正直な気持ちをタツヤにぶつければきっとまたタツヤは私を好きになると信じていた。少しの沈黙のあと、タツヤは『ヨーコとは付き合ってないよ』と言った。よかった。私はホッとした。あれはやっぱりヨーコの嘘だったんだ。私にはまだチャンスがあると思った。『私、まだタツヤのこと好きなんだよねぇ・・・』私はタツヤに気持ちを打ち明けた。『オレのこと、まだ好きでいてくれるのは凄い嬉しいけど、今は幸子とは付き合えない』タツヤはそう言った。今は付き合えない?だったらいつか付き合ってくれる日がくるということ?それはいつ?明日?あさって?来週?来年?私はその日から毎晩タツヤに電話をかけた。 『ごめん、また話がしたくて電話した』『タツヤ・・・私、タツヤが好きだよ・・・』『タツヤもそろそろ私と付き合いたくなってきた?』『タツヤ、いつになったら私と付き合ってくれるの?』私の中でどんどんタツヤが大きくなっていた。何としてでも私はタツヤとよりを戻したいと考えていた。電話をし続けて1週間が経ったある夜私はいつものようにタツヤと会話しながらこんなことを言った。『ねぇ、タツヤ?もしかしてあたしの名前が神野幸子だから付き合ってたの?だったらあたしのおかげで甲子園に行けたんだからあたしと付き合ってればもっといいことあると思うよ。大学受験だって絶対合格するしいい会社にだって就職できるしそれにそれに・・・・私は無我夢中で話した。するとタツヤが突然怒り出した。 『ふざけんな。甲子園に行けたのは野球部がみんな練習頑張ったからでおまえのおかげな訳がないだろ』その時、私は気がつかなかったが私はどうやら地雷を踏んでしまったらしい。男のプライドと言う名の地雷を。『いい加減、気づけよ?もうオレたちは終わったんだよ。もう、元には戻れないんだよ。おまえがどんなにオレのことを好きでもオレはおまえとはもう付き合えない。おまえ、ちょっと重いんだよ。オレ、これ以上おまえのこと大切にできないからだからオレなんかじゃなくて他に好きな人、見つけて幸せになれよ。オレたちは友達でいよう。』そう言ってタツヤは電話を切った。もう戻れない?あたしが重い?意味が分からなかった。私はただタツヤが好きでその気持ちをストレートにぶつけていただけなのにそれの何が悪いのか全然理解できなかった。それよりも何もそんなことを言われても私は諦め切れなかった。私はどうしたらまたタツヤが私を好きになってくれるかどうしたらまたタツヤが私と付き合ってくれるか必死で考えた。しかし、その3日後私は見てしまった。タツヤとヨーコがホテルから出てくるところを私は偶然見てしまった。やっぱりあの二人、出来てたんだ。 私は震えた。怒りと悲しみで震えた。最後の最後までタツヤはヨーコと付き合ってると私には言わなかった。タツヤは嘘をついていた。私はこの時、はじめて男のずるさを知った。タツヤは残酷な男だ。まだ私に気があるようなこと言って裏ではヨーコと付き合って。何が幸せになれだ、何が友達でいようだ。私が傷つかないように嘘をついて優しい言葉で私をフッて。そんなの、ただ自分が傷つきたくないだけじゃない。タツヤ自身がいい人でいたかっただけじゃない。もっと強い言葉でめちゃめちゃに私のことを嫌ってくれたら私だって嫌いになれたのに。タツヤのこと嫌いになれたのにこんなのずるいよ。男ってずるいよ。こんなんじゃ、優しかった頃のタツヤの思い出ばかりが残っていつまでたってもタツヤのことが忘れられないよ。 その日から、私は何も食べられなくなった。水を飲んで菓子を少し口にしてほとんど何も食べなかった。このまま食べずにいたら私は餓死できるだろうかとそんなことを考えていた。最初の1週間で2キロ落ちてあとは面白いほど体重が落ちていった。ダイエットで痩せたい女は痩せて綺麗になりたいなんて前向きに考えちゃだめだと思った。食べることをやめ誰にも気づかれずに人知れず痩せてやつれて私は死んでいくんだ。そのくらい病んでいたほうが一気に痩せられることを私は知った。1ヶ月経つ頃には私の体重は39キロになっていた。ある夜のこと私は鏡にうつる自分の顔を見て驚いた。急激に痩せたせいか私の顔は病人みたいに老けていたがあれほど嫌いだった星野優実によく似ていた。中学生の頃よりもずっとずっと星野優実に私は似ていた。 有名音楽プロデューサーが作った星野優実の新曲は2週連続1位を獲得して50万枚を突破。星野優実は一躍、トップアイドルの仲間入りを果たしていた。今の私なら・・・星野優実に似ているガリガリに痩せた今の私ならタツヤは私に振り向いてくれるだろうか。タツヤとヨーコの関係をこの目ではっきり目撃したにも関わらず私はしつこいくらいにタツヤのことをまだ引きずっていた。そうだ、少し化粧をしてみよう。私は母親が留守なのをいいことに母親の寝室に忍び込んで母の化粧品でメイクをしてみることにした続きをみる

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