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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄1

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期間限定再公開。昔、ブログでUPしていたドロドロ小説。お早目にお読みください。第1話 私は歩き続けていた。闇と静寂の中を一歩一歩ゆっくりと歩き続けていた。一度、訪れてみたい。いつか訪れてみたい。いや、人生の最期に私が訪れるに相応しい場所、それが青木ヶ原樹海だとまるで御伽話のように昔からなんとなく夢をみていたがまさか今夜、突発的に富士山麓を目指して車を飛ばしそして、樹海の中を歩くことになるだろうなんて私は想像もしていなかった。どのくらい歩いただろうか。多分、時間や距離にしたらそう大したほど歩いてはいないだろう。でも、私はとても長い間歩いているようなそんな気がしていた。自殺の名所として有名な青木ヶ原樹海。もっと恐ろしくて薄気味の悪い場所かと思ったが時折、月の光に照らされる木々の中にいると私は不思議と怖くはなかった。暖冬の3月でもう春とは言っても夜の樹海はとても寒い。しかし、歩いているうちに私は寒さも忘れていた。無我夢中で歩き続けていたせいだろうか私は足が酷く疲れてきた。『この辺にするか・・・』私はようやく足を止めた。立ち止まると今度は急に足が震えだした。 怖い。さっきまでは美しいとさえ思っていた夜の樹海だったが私は急に怖くなった。昔から私には自殺願望が少しだけあった。いや、本当に自らの命を絶とうとしたことは今までに一度だってない。ただ、(もう生きてるのが辛い。これ以上辛いことなんてない。)そう思ったとき、私は『自殺』という手段でこの世から逃げることは別にいけないことではないのではないか・・・そんな風に考えながらずっと生きてきた気がする。しかし、そんな私でもこんなにも人気のない夜の森林で立ち止まると恐怖を感じられずにはいられなかった。これは死への恐怖ではない。孤独であることの恐怖だと思う。例えばもし・・・もし私がここで死んでしまったら誰か見つけてくれるのだろうか。私のことなんて誰も気づかずに私はずっとこの場所で眠ることになるのだろうか。そう考えると怖くなった。なぜなら私の人生は孤独そのものだったから。孤独な現実から逃げるために死ぬとして死んだ後も孤独に耐え忍ばなければならないのかと思うといつの間にか私の目からは涙が溢れていた。私は何故、何故こんなことになってしまったのか・・・風の音に耳をすませながら少し、思い返してみることにした。 私の名前は神野幸子。幸せな子と書いてさちこと読む。私は自分の名前がとても嫌いだ。それに神野という苗字も因縁としか思えない。幸せな子になりますように。神の幸あれという意味で私が生まれたときに父が名づけたそうだが神も仏も信じないような父がなぜ、こんなにも絵に描いたような縁起物の名前をつけたのか今となってはどうでもいいこと。なぜなら私の人生は幸せどころか幸の薄い子という意味で幸子なのではないだろうかと思ってしまうほど不幸の連続で思い返せば男に裏切られてばかりの酷い人生だった気がするからだ。男たちは私の人生を台無しにした。思い起こせば私の不幸は中学3年生の時に覚醒した。私の家はお金持ちとは言わないがそこそこ裕福な家庭だった。父と母と兄と私の4人家族。父は小さな会社の社長で毎日忙しく働いていて母は専業主婦をしていた。そして優しかった兄。死んだ祖母が残してくれたアパートの家賃収入もそこそこあったと思う。そんなごく普通の家庭でごく普通に幸せに暮らしていた私にある日突然、不幸がやってきた。 あれは私が遅くまで受験勉強をしていたある秋の日の深夜だった。当時、高校2年だった私の兄、真一が私の部屋に入ってきた。『幸子、まだ起きてるか?』デジタル時計の赤い文字が1:25と書いてあったのが何故か今でも鮮明に覚えている。『うん、勉強してた。でももう寝るよ』私がそう答えると兄は突然、『じゃあ。一緒に寝よう』と言い出した。兄は酔っ払っていた。高校生なのに外で酒を飲んで帰ってきたのだった。そして兄は私の返事を待たずに私の布団に勝手に潜り込んでそして寝てしまった。どうしたらいいのか分からず私は部屋の電気をつけたまま兄が寝ている布団に入って眠ることにした。兄が先に入っていた布団はやけに生暖かくてなんだか気持ち悪かったのを覚えている。 少しして兄が『ユウミちゃん』と寝言を言ったので私は全てを悟った。当時、あまり売れてないアイドルで星野優続きをみる

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