Quantcast
Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

幸福な地獄24

$
0
0
第24話結婚詐欺に遭ってから3年の歳月が流れ私に転機が訪れようとしていた。悟に騙されたと分かった直後は貯金も心もすっかり空っぽになってしまい、生きる気力を失くした私はまるで廃人のようになってしまっていた。もう死んでしまいたい。そう思って何度泣いた夜を過ごしたか分からない。悔しさと自分の愚かさを呪い自分の殻に閉じこもりがちになっていた。それに・・・私やユキや山村優子を騙して金を奪い取って逃げてしまった悟の事が殺してやりたいほど憎いはずなのに・・・なのに・・・どこか心の奥底で結婚の約束までしてくれた悟の事を信じてもしかしたら・・・もしかしたら私の元に返ってくるかもしれないと彼の帰りを待ってしまっている自分にも本当に腹がたって仕方がなかった。考えても見れば私は男に騙されてばかりの人生でもう本当に男なんて信用できない生き物なんだと私は世の中の男たちを憎むようになった。今までずっと孤独と言う名の心の隙間を男で埋めようとして生きてきた私が生まれて初めて男に頼らず自立して生きていくことを決めた瞬間から私は人が変わったように強くなった。男たちへの憎しみが私の生きる源となった。 男たちを見返してやりたい。私を騙してきた男たちへの恨みという激しいエネルギーが仕事へのエネルギーへと変換された。そう、クヨクヨなんてしてる暇など私にはなかった。悟の為に借りた金を返すために私は死に物狂いで働かなければならなかったのだ。いつしか私は社内でも営業として1,2の座を争うほどに仕事がデキる女になっていた。借金も1年ほどで返済できた。私は働いて働いて仕事のこと以外は何も考えなくてすむように朝から晩までまるで正確な時計のように休むことなく働き続けていた。しかし、仕事に打ち込めば打ち込むほどデキる女になればなるほど生活のリズムが変わったせいなのか私の性欲も激しく高ぶるようになった。借金を返済し終わるまでの最初の1年で私は5人の男と肉体関係を結んだ。 一人目の男は会ったその日に『一目ぼれした』『結婚したい』と言って私に求婚した。ホテルで激しく燃えた後、私がホステスをしていたことがあると話すと男は突然『俺を騙したな!!』と逆上し私の顔に大きな青い痣が出来るほど私を殴って去って行った。 二人目の男は3年も半同棲している彼女がいる男だった。彼女との関係はとっくに冷え切っていたが一緒に飼い始めた愛犬のポメラニアンが可愛くて可愛くて彼女とも別れられないのだという。その男とは何度かホテルでセックスをしたがある日、ラブホテルのベッドの上で『幸子にだんだんとはまってきた。俺、彼女と幸子の間で揺れてるんだ』と言い出したので私は、そんなことを言っているけどそれは私を抱くための口実で実際この男にとって大切なことは40%が仕事で40%が愛犬で13%が同棲中の彼女でせいぜい残りの7%が私とのセックスなんだと冷静に判断して『嬉しい、だったらあなたのことをもっと好きになっていいの?』と笑顔で囁くと、男は数秒ほど絶句して『そ、それは困る』と言って私の元から去って行った 三人目の男は服屋の店員でファッションオタクな男だった。スニーカーや汚いジーンズに3万も4万も平気で使うくせにいつも『金がない金がない』と言ってデート代もケチるような本当につまらない男だった。私が『私と服とどっちが大事なの?』と問い詰めるとその男は『服』と即答したので私から去ることにした。 四人目の男は出会い系サイトで知り合った若くて売れない劇団の劇団員でお金は持っていないが優しくて悪い男ではなかった。ところが私が『結婚』の2文字をほのめかすとその男は『ごめん。本当にごめん』と言い残して私の前から去るだけではなく劇団も夜逃げするかのように辞めて忽然と姿を消した。 五人目の男には代官山で声をかけられそのままホテルに向かった。セックスの相性かよく『好きだ好きだ』と執拗に私の耳元で囁き念入りに愛撫をして優しくそして激しく私を抱いた。しかし、性行為が終わるとその男は2週間後に結婚式を挙げると私に白状した。しかも、結婚した後も私と関係を続けたいと言い出したので私は結婚式に招待してくれたら考えても言いと伝えて図々しくもその男の披露宴に出席し余興のカラオケでシュガーの『ウェディングベル』を淡々と歌い上げ最後に無表情で『おめでとう、本当に』と言うと花嫁がわんわんと泣き出して式場が騒然となったところで私はその場を去った。もちろん、その後その男からは連絡は来なかった。 男はみんな同じだった。男にとって必用なのは綺麗な顔の女でも性格の可愛い女でも色っぽい体の女でもない。ただの、穴。男に必用なのは女の下半身にぽっかりと開いた穴だけだ。そして女は男の性欲を満たすためだけにいつも都合よく利用されて用が済むと捨てられる。だから私も割り切った。5人の男達とは3週間も続かなかった。私のことを本当に幸せにしてくれる男なんてこの世の中には存在していない。 そう気がついた時、私は信じられるものは自分自身とお金だけだと思うようになっていた。それから私はもっともっと働いて会社でも浮いた存在になっていた。最初の頃は同僚達が飲みに誘ってくれていたが面倒になって断り続けていると誰からも誘われない女になった。仕事がデキればデキるようになるほど仕事が出来ない男に苛立ちを覚えて私は仕事でミスをした男達を怒鳴りつけるようになっていた。私は頼りない男達を見ると気分がクサクサとしてますます仕事に没頭した。 そうこうしてるうちに私は会社でも煙たがられ影でお局様と呼ばれるようになったがそんなことは私にはどうでもよかった。私はもっともっと働いてお金を貯めて1人でも幸せになってやるんだと幸せな子と書いてさちこと読む名前に負けないように1人でお金をたくさん稼いで幸せになってやるんだと思うようになっていた。気がつくと32歳の私はすっかりと老け込んで腹の周りには贅肉がつき、肌には艶がなくなり白髪も少し目立つようになっていた。私は厚化粧でごまかし白髪が目立たないよう髪を染めそして高い服を着て自分の自尊心を高めていった。 そんなある日のこと私の元に1通の手紙と2通のメールが届いた。手紙は刑務所に入っているお凛からだった。前略 幸子姐さんお元気ですか?ムショ暮らしにもすっかり慣れ私は日々反省しながらしっかりと努めに励んでいます。私はまだ刑期が残っているのでしばらくは塀の外には出られません。だから、姐さん。もう私のことは待たずに幸せになってください。それが私の願いです。        お凛私は手紙を読み終えると手紙を手の中でぐちゃぐちゃに丸めてごみ箱に捨てた。私は過去のことなど全部捨ててしまいたかった。お凛に言われなくたって私は幸せになりたくてなりたくて頑張ってきたのに気がつけば私は男たちに騙されそして友達と呼べる人すらいない誰からも好かれない誰からも愛されないそんな女になっていた。全てが嫌になった。 私はこの時、孤独という不幸を知った。10代の頃も20代の頃も私は数々の男達に騙され女達にも嫌なこともされてきた。でも、誰かが気にかけてくれていた。私の事を嫌いでも騙すつもりでもそれは誰かが私のことを気にかけてくれていたという証でもあった。しかし、今は違う。誰も私のことを気にかけてはくれない。続きをみる

『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>