春の雨のせいだろうか。買ったばかりのヒールのせいだろうか。それとも涙のせいだろうか。駅までの道を急いでいるはずなのに思うように歩くことが出来ない。地面には雨に打たれた桜の花びらたちが潰れたように落ちていた。満開のはずだったのに。可哀そうに。まるで今の私みたい。可哀そうな私。さっき私はフラれた。三年付き合い結婚も考えた彼にフラれた。もうすぐ28歳の誕生日だったのに彼にフラれた。今年は絶対一緒に桜を見ようね。って約束していたのに桜を見る前に彼にフラれた。そして雨で散った桜のように私の恋も散った。コロナのせいで世の中が変わったように順調だった私たちの恋も変わった。思うように会えなくなり私は不安と不満を彼にぶつけるようになっていた。甘えていたのかもしれない。期待していたのかもしれない。彼のせいじゃないのに。彼のせいにしたかったのかもしれない。今思えば彼は変わらず優しかった。持病のある母と暮らす私を気遣っていたからこそ頑張ろう、乗り越えようって励ましてくれていたはずなのにこんなに会えないなんてと私は彼の浮気さえも疑うようになっていた。彼が変わったんだと思い込むようになっていた。変わったのは私だったのかもしれない。話があると言われていよいよ結婚の話かと浮かれ久しぶりに会ったら別れ話だったなんてバカみたい。バカなのかな。バカだよね。「別れよう」そう言われて頭が真っ白になった。なんで。なんで。なんで。言いたいことがたくさんあったはずなのに。伝え続きをみる
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