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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄27

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第27話『う・・・嘘でしょ??アタルくんが死んだなんて嘘なんでしょ??みんなでグルになって私を騙そうとしてるんでしょ?』私はきっと嘘に違いない。ミシェルママとポピー子さんが私を騙しているに違いないと無理に思おうとして不謹慎にも少し薄ら笑いを浮かべしかし蒼白な顔でミシェルママにそう言った。『本当なのよ・・・本当にあの子・・・・そこまで言ってミシェルママは泣き崩れてしまった。『ほら、鼻水が・・』ポピー子さんがミシェルママにおしぼりを手渡すとミシェルママはおしぼりで涙と鼻水を拭き『泣いてちゃいけないわよね。泣いてちゃいけないわよね』と繰り返して言った。私は信じたくない気持ちでいっぱいだった。昨日まであんなに元気で明るくて天使のように生きていた守田アタルが自殺した?15階から飛び降りて死んだ?そんなバカな・・・ でも、私には心当たりがあった。私は決して許されない酷いことを守田アタルにしてしまったのだ。守田アタルに裏切られてカッとなって頭の中が真っ白になって・・・それで・・それで・・・彼の母親に彼がゲイであることをバラしてしまった。きっと、家に帰った守田アタルは母親からいや、両親からも冷淡な目で見られそして・・・そして死を選んでしまったに違いない・・・私は吐き気がしてきた。とんでもないことをしてしまった。私はまだ若き10代の青年の命を奪うきっかけを作ってしまったのだ。『お・・お通やは?お葬式は?』私は震える声でそう言った。どの顔をして拝めばいいのかなんて分からなかった。でも、せめてお線香だけでもあげて一言謝りたい。そんな気持ちがあったのかもしれない。 しかし、ポピー子さんは言った。『行けるわけないよ。アタルのお通やにも葬式にも。行けるわけないよ』ポピー子さんは悲しい顔をしていた。『どうして?』私がそう聞くと今度はミシェルママが話はじめた。『あたしたちはね、店の中や、この町の中じゃでかい顔をして生きてるけど一歩、外に出たらそういう訳にはいかないのよ。アタルが・・・アタルがいくらどんなにあたしたちにとって大切な存在だったとしてもあたしたちがお葬式に行けばあちらのご両親様にだって迷惑になることがあるのよ。ゲイというだけでお葬式にだって行ってあげられないことがあるのよ』ミシェルママはポピー子さんの胸の中でまた泣き崩れそしてこう言った。『どうしてこんなことになっちゃったのよ。どうして・・・こんなことに・・・まだアタルには言ってなかったのに・・・あたしとポピー子が・・付き合・・・『ごめんなさい・・私・・・私・・・・帰ります』私は、パニック寸前になっていてミシェルママの話の途中で逃げるように店を出た。ドアを開けて飛び出すと誰かにぶつかった。 『きゃあああ私は、ぶつかった拍子に体勢を崩して転んでしまった。『痛っ・・・ごめんなさい・・膝を抑えながらぶつかった相手を見るとそこに立っていたのは星野優実だった。『大丈夫?』星野優実はそう言って私に手を差し伸べた。私はその手を取ろうとしたが伸ばしかけた自分の手を思わず引っ込めてしまった。そう・・・私は誰かに手を差し伸べてもらうようなそんな人間じゃないんだ・・・守田アタルの命を奪ってしまった私が差し伸べてられた手を取って平気な顔して助けてもらうことなんて絶対にできない。私はそのまま床の上で泣き崩れてしまった。『聞いたわよ。あたしもアタルくんのこと。それで急いで店に来てみたの』星野優実も悲しそうな声でそう言った。『私・・・私・・・涙で目の前が滲んでいた私に星野優実はこんなことを言い出した。『ちょっと、話があるのよ。大事な話がね。こんなところじゃ何だからちょっと場所を変えましょう』星野優実はそう言ってハンドバックから取り出したサングラスをかけエレベーターのボタンを押した。 話?話ってなに?こんなときに・・・何の話が?私は訳も分からず星野優実とエレベーターに乗り込むと星野優実は1階のボタンを押し、そして何かを思い出したかのように非常停止ボタンを押した。グウーンという鈍い音がしてエレベーターが急停止した。『ちょ・・・何してるの・・私がそう言った瞬間、星野優実は私に平手打ちした。パンッ!!『痛っ・・何をするのよ私は頬を押さえてそう言った。突然、顔をぶたれた意味が私には全く分からず私は星野優実を睨んだ。星野優実は私の方に顔を向けて腕を組んでいた。星野優実はサングラスをしていたのでどんな目でどんなことを考えてどんなことをしでかすのか私には分からなかった。ただ、エレベーターという狭い空間の中で私は何か嫌な予感がしていた。『あたしが知らないとでも思って?』少しの沈黙のあと、星野優実はそう言った。『な・・何のことよ』私は星野優実の言ってる意味が分からずそう叫んだ。すると星野優実は信じられないようなことを言い始めた。『あなたでしょ?アタルくんを殺したのは』私は血の気がひいて目の前が真っ白になって吐き気がして倒れそうになった。な・・・何故・・・何故この女が知っているの?『言ってる意味が分からないわ』私は咄嗟に嘘をついた。星野優実の言ってる意味が痛いほどよく分かっていたが私は嘘をついた。すると星野優実は『しらばっくれるんじゃないわよ!』と、言ってまた私の頬を平手打ちした。パンッ!!動かないエレベーターの中で乾いた音が響いた。『違う・・・違う・・・私じゃない・・私じゃない・・・・動揺を隠せなくなった私は違う、違うとただ繰り返して涙を流していた。すると、星野優実は『あたし、見てたのよ。全部見てたから知ってるの。あんたが店を出てアタルくんの会話を盗み聞きしてその後、影で彼の家に電話して全部ばらしたのあたし、こっそり見てたのよ。』と、言い出した。『違う・・・違う・・・私のせいなんかじゃない・・私は必死で弁解しようとしたが言葉が何も見つからなかった。『全部あんたのせいよ!あんたがアタルを殺したのよ。彼の尊い命を奪ったのよ』星野優実は私を怒鳴った。『違う・・・知らない・・・私じゃない・・・・私は両手で耳を塞いだ。もう何も聞きたくなかった。誰かに私のせいで守田アタルが死んだと責められることがこんなに苦しいなんて思ってもみなかった。『あたしがゴシップ記事を書いてること、忘れたわけじゃないでしょうね?ゲイの青年を死に追いやった負け犬の女。ワイドショーが好きそうなネタよ。どうする?あたしが書いてあげようか?あんたの人生を破滅させるような記事をあたしが書いてあげようか?』星野優実は私の耳元でゆっくりとそう言った。『いや・・・やめて・・・お願い・・・私は守田アタルが死んだショックととんでもないことをしてしまったという後悔と星野優実に全てを見られていたとい事実ともし、このことが世間に知れたらという恐怖でもう頭の中がどうにかしてしまっていて何も考えられなくなっていた。 『泣いたって許されないのよ。あんたは人を殺したも同然なんだから。ねぇ、幸子。あんたには罪の意識ってないの?守田アタルがこれから生きるはずだった人生の代償を償いをあんたはしなきゃいけないのよ』星野優実は私の肩を揺さぶりながら容赦なくそう言った。『どうすれば・・だってどうすればいいのよ、もう、死んじゃったの。彼は死んじゃったの。生き返ることなんてできない・・・どうすればいいか分からない私、どうしたらいいか分からない。どうしたらいいか分からない!!!』私は泣き叫んでいた。『甘ったれないで!!!!よく聞いて?あなたには一つだけ方法があるの。あなたが救われてアタルくんが救われる方法がたった一つだけあるのよ』星野優実は仏のような優しい言葉で私を説き伏せるかのように言った。『救われる方法?ど・・・どんな方法なの?』罪の意識で押しつぶされそうになった私はわらにもすがりたい気持ちで星野優実に泣きついた。すると星野優実は淡々と言った。『簡単よ。あんたがアタルくんの代わりに新しい命を身ごもるのよ。天使のように美しかった守田アタルの代わりに天使のように可愛い赤ん坊をあんたが宿すのよ』私は星野優実が何を言っているのかさっぱり意味が分からなかった。『代わりに身ごもる?何を言ってる・・・私が聞き返すと星野優実は黙ってボタンを押しエレベーターを動かした。1階の着いてエレベーターが開くと星野優実は私の腕をもの凄い力で引っ張り私を通りかかったタクシーに乗せた。『渋谷にある佐々木産婦人科までお願いします』星野優実はタクシーの運転手にそう伝えた。そしてタクシーは走り出した。産婦人科?こんな夜中に産婦人科に行ってどうするつもりなのだろうか。『ねぇ・・続きをみる

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