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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄26

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第26話突如彗星のごとく現れた守田アタルという男の子の美しさに私は本当にうっとりとしながら酔いしれているとポピー子さんが『ママ?よくこんな可愛い子をこんな場末の店の店子として雇えたね?』と言った。ミシェルママは『こんな場末な店は余計よ!!でも、アタルくんって見た目はこんなに可愛いルックスだけど実は年上が好きなんですって。だからちょうどいいじゃない?こんな店、あんたたちみたいなババアしかこないんだからさ』と言った。『誰がババアですって?でもあんた、とうとう自分でこんな店って言っちゃったわね?』と星野優実が突っ込みを入れたがミシェルママは星野優実の言葉は無視して『あんたたち、何か歌えば?もう、相手するの疲れたわ?』と営業を放棄してカラオケのデンモクを私たちに渡すと1人でビールを飲み始めてしまった。『アタルって言います。今日、はじめてですがよろしくお願いします。あの・・・みなさんのお名前伺ってもいいですか?』着替えてカウンターの中に入った新人店子の守田アタルはその初々しい笑顔で勝手に飲んで営業放棄したミシェルママに代わって私たち3人を接客してくれた。とても働くのが初日とは思えないほどよく気が利く子だった。時折、酒の作り方が分からずママに聞いてる姿もなんだか可愛らしくて私は守田アタルに妙な質問をしてしまった。『アタルくんって、やっぱりゲイなの?』言った後に失礼だったかと思ったが守田アタルは『はい』と笑顔で頷いてくれた。その答えを聞いて私は嬉しいような残念なような不思議な気持ちだった。ゲイの男の子なら私と付き合うことも私のことを惑わせることも私を悲しませることもきっとないだろう。こんなにも美しい少年を私はただそばで見ていることができればきっとそれだけで幸せなのだ。でも・・・本当は・・・守田アタルがゲイなんかじゃなく普通の男の子だったら・・・私は彼のことを好きになっただろうか?いや・・・人を好きになることに理由なんて必要だろうか?ゲイの男の子なんて好きになっても幸せになれるのだろうか?いや、そもそもゲイって何なのだろうか?女のことを好きになることは100%ありえないことなのだろうか?守田アタルが私のことを好きになることはありえることなのだろうか?あぁ・・・もう私、何をバカなことを考えているんだろう。今夜初めて会ったばかりでまだ彼のことなど何も知らないのにこんなことを考えているなんて私はどうかしている。少し酔っていたせいか私は頭の中で色々なことを考えすぎていた。すると、星野優実が『アタルくん、年、いくつ?若いよね?』と質問した。守田アタルの年齢は私も興味があったのでナイスな質問だと心の中で思った。『えっと・・・21歳です。大学生です』とハニカミながら守田アタルは答えた。『若い!』ポピー子さんが嫉妬したような口調で言った。『21歳か・・・・私はため息をついた。年が離れすぎている。21歳なんて32歳の私からすれば年の離れた弟みたいなものだ。いや、そうじゃない。彼からしてみれば私なんてただのオバさんに違いない。それに守田アタルはゲイなのだ。『アタルくん。好きなの飲んでいいよ。』私は守田アタルに酒を勧めた。私にできることはそのくらいでそれ以上に何かをしても期待できることなど何も起こらないだろう・・・いや・・・私は一体何を期待しているというのだろうか?こんな年の離れたゲイの男の子に私は何を期待しているのだろうか?もう、訳が分からなかった。恋なんて2度としない。男なんて2度と信用しないと思い続けてきた私の心の隙間を彼の天使のような美しさがたったの一瞬で埋めてしまったようなそんな不思議な気持ちだった。『じゃぁ、いただきます!』そう言って守田アタルはビールを美味しそうに飲んだので私は彼の笑顔を見ているだけで嬉しくなってもっともっと酒を勧めた。それからポピー子さんと星野優実は酒も入り酔ってきたのか2人でカラオケを歌いはじめたので1人取り残された私は守田アタルとのおしゃべりに夢中になっていた。すると守田アタルは『幸子お姉さんにだけ言うけどホントは19歳なんです。未成年だからママに21歳って言うように言われてるんだ』と私の耳元で言った。19歳。まだ未成年。未成年者に酒を勧めてしまったことをほんの一瞬だけ悔やんだがそれよりも何故、守田アタルがまだ汚れない天使のように美しいのか年齢を聞いて理解できたような気がした。まだ大人ではないからこその純粋な美しい輝きが守田アタルにはあった。さすがに未成年者でしかもゲイの守田アタルに密かな恋心を抱くのは異常だということは私にもしっかりと判断できた。自分の心にブレーキをかけることができた。だからこそ私は嬉しかった。本当の年齢を言ってくれたこともそして私にだけ教えてくれたということも。『ねぇ、メールアドレス教えてよ。お姉さんが今度美味しいもの食べに連れてってあげる』私はそう言って守田アタルとメアドを交換することにした。『あっ、いいですね~連れてってください』守田アタルはそう言って携帯を取り出すと赤外線通信でアドレスと電話番号を送ってくれた。そう、彼は私にとっては弟のような存在。私には家族なんていないも同然なのだから私は誰かに優しくしてあげたいだけなのだ。家族みたいに接してあげられる誰かがこんなにも年下でこんなにも美しい守田アタルというゲイの少年だっただけ。いくらなんでもゲイの男の子を好きになってしまうほど私は負け犬でも落ちぶれてもいない。私はそう自分に言い聞かせて次の日、守田アタルに誘いのメールを送信した。(昨日はどうもありがとう。本当に楽しませてもらいました。今夜もしよかったらお店に行く前に一緒にご飯行きませんか?)よく考えてみればこんな誘い方は同伴出勤を迫っているようなものなのだが彼はゲイバーで働くゲイの男の子。私はそんな彼のことを応援してあげるだけの金は持っている30過ぎの独身女できっとそれは何も起こらないステキな関係のような気が私にはしていた。私は守田アタルを美味しいフレンチレストランに連れて行った。きっとこんな美味しいもの食べたことないと喜んでくれると思って私は彼の喜ぶ顔が見たくて連れて行った。そして守田アタルから私は色々な話を聞いた。ゲイに目覚めたのは高校2年生の時でクラスの男の子に片想いをして自分がゲイであることに気がついたこと。まだ誰とも付き合ったことがないこと。両親にはカミングアウトしてないこと。一人っ子だから親を悲しませたくないので絶対にカミングアウトはできないと思うこと。何より一緒に住んでいる両親のことが大好きなこと。ベッドの下にはこっそりゲイ雑誌が隠してあること。そして、夢があること。夢のために今は大学で勉強をしていること。私はどんな夢を目指しているかは聞かなかった。男の人の夢を聞いて私は一度、失敗しているから、悟のことで失敗しているから私は守田アタルの夢は聞かなかった。でも守田アタルは本当に色々なことを私に話してくれたので私は彼のことを応援してあげたい気持ちでいっぱいになっていた。そう・・・私のことを応援してくれる人なんてこの世にはいないのだからせめて私は誰かを応援してあげたい。きっと歳を取ったというのはこういうことなんだろう。お節介な気持ちが私の中から次々と溢れだしていた。 それから私は守田アタルが店に入る日は必ずゲイバー『レッツ』に通ったし時間が合えば必ず守田アタルを食事に誘った。守田アタルの評判を聞きつけ連日『レッツ』には客が入りミシェルママも『全て、あたしのおかげよ?』と、大喜びだった。私は本当は・・・誰かに取られるのが嫌だった。例え自分の物にならなくても守田アタルがゲイだとして例え自分と付き合うことができなくてもこんなにも美しい天使みたいな守田アタルが店にやってくる守田アタル目当ての下心丸出しのゲイたちに汚されてしまうのが嫌で私は守田アタルを独占したくて独り占めしたくて店に通いつめていた。一人っ子の守田アタルも私のことを本当の姉のように慕ってくれた。そう、彼は私を『幸子姉さん』と呼び私は彼を弟のように思い私たちの間には美しい姉弟愛が生まれようとしていたのだった。そして・・・事件が起こった。それはゲイバー『レッツ』の2周年パーティーが行われた夜だった。私と星野優実とポピー子さんはオープンと同時に店におしかけ一番乗りでミシェルママと2周年の記念日を祝った。ミシェルママは2周年のイベントというだけあってマドンナ風の衣装とメイクでゴツイ身体を惜しげもなく見せ気合の入った女装で私たちを楽しませてくれた。そして守田アタルは作り物の天使の羽根を背中に背負って天使の衣装で私たちを出迎えてくれた。『やっだ、ミシェルママ。今夜はいつも以上にブスよ?』星野優実はミシェルママの酷すぎる女装姿を指さして笑った。『あらあんた、あたしのこと知らなさ過ぎるわ?ジャキーンあたしも自分の顔を鏡で見て、びっくりして叫んだわよ。ぎゃーバケモノ!ってアホか!!』ミシェルママも上機嫌で私はずっと笑いっぱなしだった。次第に店が混雑しはじめ、多いときには狭い店内に40人近い客が押しかけて2周年という記念すべき日を祝った。時折、客たちは似すぎている私と星野優実を見て『あんたたちって双子のニューハーフ?』と言って笑っていた。星野優実は笑いながら『そうなのよ~よろしくね』と濁声で即答していたが私は笑えなかった。何故なら私は知っていたから・・・2周年のイベントなんてただの口実で本当は多くの客がただ、守田アタルを狙って店にやって来ていたことを私は知っていたから楽しいはずのお店の記念日に私は次第にちっとも笑えなくなっていた。ゲイたちはみんな物欲しそうな目つきで・・・獲物を狙うハイエナのような目つきで天使のように美しい守田アタルのことを凝視していた。そしてみんな守田アタルに次々と酒を飲ませていた。本当は未成年者なのに・・・イベントだからといって客たちから飲まされてしまう守田アタルを見てるのは本当に辛かった。客たちはきっと守田アタルに酒を飲ませて酔わせてそして酔って何も分からなくなった守田アタルにいかがわしいことをしたいと汚らわしいことをしたいと考えているに違いなかった。私は姉として血は繋がっていないが守田アタルのよき理解者として彼の純潔を守ってやる義務があった。そう、誰にも渡すものか。私がこの店で一番最初に守田アタルと知り合った客なのだから・・・彼のために彼の身体を狙う薄汚い客たちから彼の身を私が守らなければならないのだ。しかし・・・私は誰にでも優しく接する守田アタルに嫉妬もしていた。店子として働いているのだから誰にでも優しく接するというのは仕事をまっとうしているというとても当たり前のことなのだが私はこんなにも彼のことを考え店にだって通って金を使い外では美味しいものを食べさせてあげてまるで姉弟のように接しているにもかかわらず店の中では私も客も平等に扱い同じ笑顔をふりまく守田アタルに嫉妬していた。いや、私なんか以上に他の客にはもっと可愛い笑顔を見せていた。そう、私はただの女続きをみる

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