Quantcast
Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

幸福な地獄15

$
0
0
第15話沢田の妻、ミネコが店から出て行くとお凛が待ってましたとばかりに私に近づいてきた。『ねぇ、神野さん?今の人、もしかして沢田さんの奥さんなんじゃない?』意地悪そうな顔をしてお凛が私の顔を覗き込むのでつい視線を逸らすと『やっぱりね。自業自得よ。二人の男を同時にたぶらかそうとするからこういうことになるのよ。奥さんが店に乗り込んでくるなんてよっぽどよ、あははは』と私を見下したように笑った。私はテーブルの上に置かれた鳩のキーホルダーを手にした。ミネコが置いてったキーホルダー。私が沢田のために買ったお揃いのキーホルダー。いくら正妻だからって何をしてもいいって言うの?私、負けたくない。あの女にだけは負けたくない。 沢田の子供達のことは心配ではあったが私も相当意地になっていてミネコにどんな嫌がらせをされようとももう1歩も引き返すつもりはなくこの不倫という恋愛劇を更に突き進んで行く覚悟を決めた。ミネコが去ってから1時間ぐらい過ぎた頃に今度は何も知らない沢田が来店して私とお凛を指名した。最近、沢田はお凛も一緒に指名するようになっていたが私はあまり気にしていなかった。沢田に指名されるとお凛は愉しそうに『沢田さん、危機一髪よ?ちょっと前に奥さんが怒鳴り込んできたんだから』と笑って言った。『えっ?』沢田は驚いた顔をして私の方を見た。私は頷いた。お凛は沢田に酒を作りながら甲斐甲斐しく体を密着させていた。『あたし、修羅場ってはじめて見ちゃったな。こんなこと言ったら失礼だけど沢田さんの奥さん、こわ~いの』お凛がそう言うと沢田は気まずそうに苦笑いした。既に一度バレているせいか沢田はいまさらジタバタしても仕方がないといった様子でお凛が作った酒をガブガブと飲んでいた。私は堪らず『だいたい・・・お凛ちゃんあなたがいつも香水つけて沢田さんを接客するから私が疑われたんじゃない・・・』と、私は自分のことは棚にあげて沢田の奥さんが乗り込んできたのはまるでお凛のせいのように言ったお凛ははぁ?何言ってるの?と言った顔で私を睨んだが沢田が『香水がどうしたの?』と聞いてきたので私は続けた。 『奥さんが・・・沢田さんの体から香水の・・・プワゾンの香りがするって怒鳴り込んできたのよ。プワゾンはお凛ちゃんがつけてる香水なのよ・・・濡れ衣にもほどがあるでしょ?』お凛は私と沢田が10年も不倫関係を続けていることを知らない。鳩のキーホルダーのこともここ最近は週に3回はホテルで密会してることもお凛は知らないのだ。だから私はお凛に2人の関係を悟られないようにそして沢田に同情してもらおうとわざとお凛のせいにした。私は嫌な女になっていた。沢田を手に入れるためなら嫌な女になる覚悟だって十分に出来ていた。『あら、わる~ございましたね。だったらお二人でごゆっくりどうぞ。でも、本当に私の香水だけが原因なのかしら?ねぇ、沢田さん?』と意味深にお凛は沢田に問いかけてテーブルを去っていった。お凛がいなくなったおかげで私はゆっくりと沢田と話すことができた。妻のミネコがどんなに恐ろしい女だったか私は沢田に全てを話した。ミネコを悪者にすれば沢田は私の味方になってくれる。私はそう思って全てを話した。子供のことも全部話した。ミネコが子供に手を上げていることや子供の貯金箱を勝手に持ち出して私の目の前で割ったこと。洗いざらい全部話した。 沢田は優しく私を抱きしめながら話を聞いてくれた。『大丈夫、大丈夫』と言いながら私を強く抱きしめてくれた。子供への暴力もきっとミネコの戯言だと言って沢田は私を落ち着かせてくれた。でも私は不安だった。このままミネコの行動がエスカレートし続けると沢田もいつか私といることが面倒になるんじゃないかと思って私は不安でたまらなくて賭けに出ることにした。 『私、別れたくないの。奥さんになんて言われてもあなたと別れたくなんてない。大丈夫、私は自分の立場を分かってるからあなたに迷惑かけたりしないから奥さんと別れて欲しいなんて言わないからこのままあなたの愛人でいさせて?今日、お店早くあがるから私の部屋で待ってて?これ、部屋の合鍵。不安だから・・・少しでいいから・・・今夜、私のことを抱いて欲しいの。迷惑はかけないから・・・』そう言って私は自分の部屋の合鍵にミネコが置いていった鳩のキーホルダーをつけて沢田に手渡した。そういえば、10年も関係を続けているのに沢田には合鍵を渡していなかった。でも、今こうやってお揃いの鳩のキーホルダーもその意味を成したかのように思われた。それに・・・私は今夜沢田に抱かれるべき理由があった。私の計算が合っていれば今日は排卵日で沢田に抱かれれば・・・私にも勝算があるかもしれない。あの女から沢田を奪ってやる。 沢田はキーホルダーを手にすると『分かった、先に帰って待ってる』と言って私にキスをして店を出て行った。心臓が飛び出しそうになった。私は何て恐ろしいことをこれからしようとしてるのだろう。ずるい女。したたかな女。計算高い女。確信犯。果たして私が妊娠をして本当に沢田とあの女を別れさせることができるかなんて分からない。でも、こうすることでしか私は前に進めない。もう、この方法しかない。10年も続いたこの関係を確実なものにするにはもうこれしか道は残されていない。そう決意して私はママに少し早く上がらせてもらえないか頼むことにした。 ところが・・・立ち上がってママのところに向かおうとしたその時だった。『きゃああああああ』突然の悲鳴。そしてグラスが割れる音が聞こえた。声の方を見るとナイフを持った男がお凛の前に立っていた。『てめぇ、馬鹿にするのもいい加減にしろよ。外人の真似事なんかして日本人だったんじゃねぇか。俺は客で来てるんだ、金払ってるんだ、減るもんじゃねぇんだ、乳触ったくらいでガタガタ言って馬鹿にしやがって俺のことをシャチョサンなんて呼びやがって俺はどうせ、万年係長だ、ふざけやがって・・・』その男はお凛が接客するのを酷く嫌がってたセクハラ男だった。『やだ・・・そんな脅しなんか騙されないわよ。刺せるもんだったら刺してみなさいよ。こんなことしかできないからあんたは万年係長なのよ』負けん気の強いお凛は男をさらに逆上させるような言葉で煽っていた。『ばかにするな・・ばかにするな・・うわああああああああああ男がお凛に向かって突進した。あぶない・・・気がつくと私は走って二人の間に割って入りまるで盾にでもなるかのようにお凛をかばっていた。ドンという鈍い衝撃音がして私の腕に激痛が走った。『きゃあああああ』店内にはホステスたちの悲鳴が響き渡っていた。 突然のことで何が何だか自分でもよく分からなかった。自分の右腕に刺さっていたナイフを見てようやく何が起こったのか私は理解した。私は男に刺されたのだった。真っ赤な血がボタボタと腕からしたたり落ちていて私は急に怖くなってそのまま気を失ってしまった。『ちょっと、神野さん!!神野さん!!!しっかりして続きをみる

『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

Trending Articles