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Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
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幸福な地獄14

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第14話私は浅い眠りの中で何度も何度も同じ夢を繰り返しみた。沢田から連絡があって沢田が奥さんと別れてくれると言って沢田が私を迎えに来てくれてそして沢田が愛してると言ってくれる夢。夢の中で私は沢田に抱かれながら『会いたかった・・・会いたかった・・・』と涙を流しながら呪文のように呟いていた。しかし目が覚めるとそれが夢だったということに気づかされて私は絶望した。沢田は会いに来てくれるどころか連絡さえもくれていない。携帯の着信履歴を何度確かめても沢田からの着信もメールも残っていなかった。そして激しく落胆した私は泣きながら再び眠りについて同じ夢を見るというのを繰り返していた。沢田は確かに連絡すると言って私の部屋を出て行ったのに日曜日の昼を過ぎても沢田からの連絡は来なかった。 その代わりイタズラ電話がかかってくるようになった。無言電話。私の携帯には非通知で、家の電話にも交互に30分おきにかかってきた。陰湿で気持ちの悪いイタズラ・・・それが沢田の妻、ミネコの仕業というのは私にだって理解ができた。そうだ・・・父の愛人だった美幸さんも無言電話に悩まされていたんだ。無言でじわりじわりと追いつめて私のことを苦しめる気なんだ・・・私は絶対に負けない。奥さんに認められる必要なんてどこにもないんだから私は愛人らしく堂々としていればいいの。もう、私は訳が分からなくなっていて自分自身を正当化することによって全てのバランスを保とうとしていた。そして、ようやく沢田から連絡が入ったのは月曜日の夕方のことだった。 その日、私はイタズラ電話や沢田からの連絡をずっと待っていたせいでほとんで眠れず青白い顔で店に向かうとホステスのお凛が『神野さん、どうしたの?お葬式みたいな顔して。そんな顔じゃ、客が逃げるわよ?』と言った。私が『大丈夫よ、何でもないの』と言うとお凛は仏頂面で『そう、だったらせいぜい足手まといにならないようお願いするわよ?』と言って私を軽く押し飛ばした。私は押された衝撃でバランスを崩しフラフラとよろけると倒れそうになった私を誰かが後ろから支えた。振り返ると後ろに立っていたのは島田だった。『大丈夫か?』心配してるのかと思えば『悪りぃけど少しばかり金、くれよ』と私の体にイヤらしく触れながらニタニタと笑って言った。 どいつもこいつも私を苦しめる。もう私は嫌になって財布から札をむしり取るように掴んで島田に投げつけた。『くれてやるわよ!!全部拾ったらとっとと帰って!』ヒラヒラと舞うお札を眺めながら私がそうヒステリックに叫ぶと『なんだよ、おまえ生理か?』と言って島田はヒョイヒョイと私が投げつけた金を拾って店から出て行った。恥もプライドもない男だった。リリリリン リリリリン『神野さん、電話よ』店の電話がフロアに鳴り響き電話に出たお凛が私を呼んだ。店に電話してくるなんて誰だろう・・・私は沢田の妻からの無言電話じゃないかと思い不安になった。『ありがとう・・・お凛にそう言って受話器を受け取るとお凛が耳元で『島田は私の男なの。勝手な真似しないで欲しいわ?あの男は私が面倒みるの。私の物なのよ』と言った。島田に騙されてるって気づいてないお凛をひどく可哀想に思ったが私はそれどころではなかった。『もしもし・・・緊張した声で電話に出ると電話をかけてきたのは沢田だった。待って待って待ち続けた沢田からの電話だった。『ごめん、連絡が遅くなって。今日、これから店に行くから。ゆっくり話そう。話があるんだ』話がある・・・そんなこと言われたら別れ話に決まってる。『嫌だ・・・別れ話なら聞きたくない・・・』私はそう言った。すると沢田は『大丈夫。別れ話じゃないから。それじゃ、後で』と言って電話を切った。 そして店が開店してすぐに沢田が店に来て私を指名した。なんだか気まずかった。そして恥ずかしかった。あれほど沢田に会いたくて会いたくて仕方なかったのにいざ、会ってみるとどうしていいのか分からない。何を話したらいいのか分からなくて黙ってしまう。でも黙ってしまうと今度はこの沈黙が怖い。沢田が何を考えてるのか分からない。やっぱり別れ話をしに来たのかと思うと余計に言葉が出てこない。『奥さん、大丈夫だった?死ぬなんて大騒ぎしてたけど』沈黙に負け、私はわざと意地悪なことを言った。沢田は苦笑いをしながら『あぁ・・とだけ言った。それが何だか許せなくて私は『やっぱり奥さんの方が大事よね。そりゃ、そうよね。私なんかよりずっとずっと大切な人なのよね。死なれたら困るのよね。私なんかが死んだってきっとあなたは何も思わないのよ・・・私はよせばいいのに酷いことを言って沢田を責めた。『そう言うなよ・・・沢田は困り果てたように言ったが『だってだって・・・私、私・・・あなたを失いたくないんだもん・・・私はそう言って涙が溢れてきた。すると沢田は『俺も、幸子のこと大切に思ってる。信じてくれ。』と言って私を抱きしめた。信じてくれって言われると私は弱い。沢田が奥さんと別れて私のことを選んでくれることなど決して無いと頭の中では分かっていても私は沢田を信じ、許してしまう。『今度はもっと慎重に会おう。きっと大丈夫。もうバレないさ』 男は単純だ。女の恐ろしさを知らない。でも、私は沢田が愛しくて仕方なくて『うん』と頷いた。ギャシャーーン奥のボックス席でグラスが割れる音がした。『シャッチョサーン コマリマスヨ モウヤメテ』フィリピン人ホステスのフリをして接客していたお凛が怒りながら私のボックス席へと歩いてきた。『またあのスケベ客が私の胸を触りやがって。神野さん、ちょっと助けて?』と私の耳元でそっと言うと勝手に沢田の隣に座って『ここ、お邪魔しちゃいま~す』と、言ってお凛はさっきまでとはまるで別人の態度で沢田の前では可愛らしい女になっていた。挙句にお凛は香水をたっぷりつけたいやらしい体で沢田に抱きついたりして・・・私は気が気ではなかった。 それから私と沢田は昼間、時間を見つけてはラブホテルで密通した。体だけ求められているのかと思うと少し不安にもなったが奥さんに勝てる唯一の武器がそれなら私はそれでも言いと思ったし一度バレているという事実が私の沢田への愛という名の情熱をさらに激しく燃え上がらせていた。週に3度は安いラブホテルで行われる昼間の情事を1ヶ月続きをみる

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