Quantcast
Channel: ゴマブッ子オフィシャルブログ「あの女」Powered by Ameba
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

幸福な地獄12

$
0
0
第12話『もうすぐ10年目の記念日だけどあなたは何が欲しい?今年はあなたの欲しいものをプレゼントしたいの』1週間ほど前、時間を作って私のアパートへと立ち寄ってくれた沢田にビールを注ぎながら私はそう聞いた。愛人という立場の私は金銭的なことも含めいつも沢田には世話になりっぱなしだったのでせめて2人の記念日だけは盛大にお祝いをしたいと毎年思っていた。家庭がある人・・・妻子ある人と付き合うとクリスマスや正月のイベントがくるたびに嫌と言うほど自分の立場を思い知らされる。例えば沢田の誕生日やクリスマスはいつも一日遅れでしかお祝いすることができなかった。でも・・・2人の記念日には2人が関係をはじめた記念日には必ず沢田と会うことができたので私にとって今日という日が人生で一番楽しい記念日だったのだ。私は愛人として最低限の分別ある行動は取るようにいつも心がけていた。例えば、沢田と会うときは奥さんに気づかれないよう香水はつけなかった。誕生日プレゼントにも気を使った。家庭がある沢田にはなるべく形に残らないプレゼントがいいと思い沢田が好きなシャンパンやワインを毎年プレゼントしていた。でも・・・今年の2人の記念日には何か形に残るものを渡したいという衝動が私の心の中で芽生えていた。『そうだな・・・・』沢田はそう言いながらキーホルダーを取り出した。『キーホルダーが欲しいかな。おそろいの。』沢田のキーホルダーはボロボロで今にも取れてしまいそうだった。『そんなに安いものでいいの?』私がそう聞くと沢田は頷いてビールを飲み干し私にキスをした。奥さんが・・・沢田の妻が選んだキーホルダーなのだろうか。私はいたたまれない気持ちになって沢田に抱きついた。沢田に強く抱きしめていないと沢田がビールの泡のようにふわっと消えてなくなってしまいそうで不安で不安で押しつぶされそうだった。その夜は私は何度も何度も絶頂を迎えた。沢田に愛されたくて何度も何度もせがんだ。次の日、私は出勤前に銀座に立ち寄った。ブランド店を歩き回り沢田に似合う高価なキーホルダーを探した。色々見て歩き気になったのは銀色でシンプルなホワイトゴールドのキーホルダー。そしてブランドのロゴマークと一緒に鳩のマスコットがついているキーホルダーの2つだった。いつもの私なら無難で目立たないシンプルなキーホルダーを選ぶはずだった。しかしその時、私は少し迷って鳩のマスコットがついている可愛いキーホルダーを選んだ。平和の象徴である鳩のマスコットがついているキーホルダーを・・・・魔が差した。と言うのだろうか。私は計算していたのかもしれない。男は鈍感だからこういうことには気づかないがきっと奥さんなら何か気づくかもしれない。それがきっかけになれば・・・10年も不倫関係を続け何も進まない沢田との関係にささやかな波風を立ててみたいと私に魔が差したのかもしれない。私は綺麗に包装してもらった沢田へのプレゼントを握り締めながら沢田が店に来るのを待っていた。そして店に、沢田が来た。『記念日おめでとう。もう10年なのね・・・』私はボックス席で沢田を接待しなが続きをみる

『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3119

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>